あの人の挑戦ストーリー
- vol.19植松努氏
株式会社植松電機 代表取締役 -
「どーせ無理」なんて言わないで。町工場でも宇宙開発ができるんだから。
何にチャレンジしているのか?
北海道赤平市で株式会社植松電機を営む植松努さん。リサイクル用マグネットの製造・販売を主な事業としながら、2004年から宇宙開発・研究活動に取り組み、ロケットや人工衛星の打ち上げに成功。微小重力実験装置を独自に設計・施工するなど、着実に成果を上げ、世界中の研究者が植松電機を訪れるようになりました。
宇宙の美しさに憧れ、飛行機やロケットの技術に夢を描く……かつてはそんな子どもの一人だったという植松さん。しかし今、宇宙は「夢」ではありません。宇宙を「手段」として、「児童虐待やいじめをなくす」ことに挑戦しています。
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なぜ、チャレンジするようになったのか?
友だちに誘われて児童養護施設のボランティアに参加したときのことです。親からひどい目に遭った子どもたちだったので、僕たちも警戒されてしまって、最初は誰も近寄ってきませんでした。でも、一生懸命働きかけるうちに、だんだんなついてくれたんです。
ある男の子が自分の夢を教えてくれました。それは「親と一緒に暮らすこと」。信じられませんでした。虐待した親のことを、その子はまだ愛しているんです。いくらお金を寄付しても、何の解決にもなりません。どうしてこんなことが起きてしまうんでしょうか?
「どーせ無理」
いろいろ考えていくうちに、子どもの頃に学校の先生から言われた言葉を思い出しました。僕が飛行機やロケットの話をすると、お前なんかにできるわけがない、無理だ、ムダだと否定されました。勉強してもムダ、努力してもムダ、どーせ無理……。人の可能性を否定する恐ろしい言葉です。
もしかすると、あの子の親も、どこかでこの最悪の言葉に出会ってしまったのかもしれない。自分の可能性を誰かに否定され、自分の未来を諦めてしまったのかもしれない。自分が奪われたから、子どもの未来を奪うようなことをしてしまったのかもしれない。人が自分の未来を諦めないためには、どうすればいいんだろう?
そう考えたとき、行き着いた答えが「宇宙」でした。
何のために、チャレンジするのか?
生まれたときから諦め方を知っている人は1人もいません。子どもの頃はボタンがあれば押してみる、ハンドルがあれば回してみる、宇宙にだって行ってみたい、みんなそうだったはず。
でも、「宇宙飛行士になりたい!」と言おうものなら、大抵の大人は否定します。よっぽど頭が良くないと無理だとか、ものすごくお金がかかるから無理だとか。それで大抵の人は諦めてしまいます。「宇宙」が諦め方を覚えるきっかけになってしまっているんです。
だったら、そのきっかけをなくしてしまえばいいんじゃないでしょうか?
植松電機ではリサイクル機器で稼いだお金を宇宙開発に投資しています。補助金や助成金はどこからももらっていません。「それでどうやって元を回収するの?」と質問されることもありますが、僕たちにとって宇宙開発はビジネスではありません。売上はほぼゼロですが、世界中の研究者と仲良くなれました。やったことがないことをやりたがる人、諦めない人、工夫する人。そういう仲間が増えました。
みなさんが「どーせ無理」という言葉に出会ってしまったときに、僕たちのことを思い出してほしいんです。
「北海道の田舎で、たった20人で宇宙開発をやっているんだから、無理ってことはないんじゃないの」
そんな風に思ってもらえたら嬉しいです。