あの人の挑戦ストーリー

vol.06栄和人
女子レスリングコーチ

東京五輪、全階級 金メダル獲得への挑戦!

vol06 栄和人

何にチャレンジしているのか?

吉田沙保里、伊調千春・馨姉妹のほか、多くのオリンピックメダリストを輩出してきた栄監督は今や、“世界最高の指導者”と評される存在。しかし、自身も全日本選手権で優勝、世界選手権で銅メダルを獲得する将来を期待される選手でした。
そんな栄氏が女子レスリングコーチになったのは30歳のとき。ソウル五輪出場を果たすものの、初戦残り20秒でまさかの逆転敗退の直後のことでした。現役選手を続けながらの「チャレンジ」と挫折の日々。そして現在(いま)に至る「レスリング」に対する熱い思いを是非お聞きください。

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なぜ、チャレンジするようになったのか?

vol06 栄和人②

最初は女子選手の指導なんて嫌だったんです。私は指導すると夢中になってしまう癖があり、1人の選手を相手に何時間も研究に費やします。男子はそれを見ても何も言わないのですが、女子は1人の選手の指導に集中すると他の選手が妬み、さらには不満が募る。強くしたい一心で叱ると挙句の果てに「ついていけない」と言われてしまう。(苦笑)そんなこともあり、なかなか自分の指導スタイルが作れず迷い悩みました。

「私にはもう無理」と自暴自棄になって、指導から逃げるために現役復帰をしたのですが、何もかもがグチャグチャでした。そんなとき、尊敬する元レスリング選手から「選手を辞めて命をかけて指導をしろ」と言われたことで目が覚めたんです。

現役時代を思い出しました。ロサンゼルス五輪の選考会で負け、失意の末、命を絶ちたいとさえ思った現役時代のことを思い出したのです。「強い選手の育成には信頼関係が大事」と言いますが、それ以前の問題でした。コーチが本気で「選手を五輪で勝たせたい」と思わなければ、熱意が選手に伝わるはずはありません。
そう考えるようになってからは「選手から好かれたい」「信頼されたい」などという思いはなくなり、ただ選手を強くするのみ。そのために邁進しています。

何のために、チャレンジするのか?

vol06 栄和人③

私は学生時代からオリンピック出場、オリンピックメダリストになることを目標にしてレスリングを続けてきました。オリンピックへの道が断たれたときは、人生が終わる気がして絶望的な気持ちになりました。指導者になってからは選手をオリンピックに送り出すこと、金メダリストを育てることに力を注いでいます。オリンピックに対する思いは、選手であったころと指導者になってからもどちらも変わりはありません。

吉田選手には、「自分より強い選手を作るんだ」という思いを持って今後は選手を続けながら、指導をしてほしい。そして、自らが育てた選手に自身が勝てれば自分が金メダルを目指せばいい。

「辞めない」ということは「やり抜く」ということです。やり抜いた先にはやり抜いた人間にしか見えない景色が必ずあります。それを一人でも多くの選手に見せてあげたい。それがレスリングの指導者を続ける理由です。そして、「レスリング」という競技を社会的な認知と評価をあげることが私の使命だと思っています。