あの人の挑戦ストーリー
- vol.14山村宙載氏
株式会社やまむらや 代表取締役 -
お肉とバーベキューで人の心を豊かに!
何にチャレンジしているのか?
京都を中心に、お肉のスーパーとして6店舗を展開する「やまむらや」は創業40年。
「スーパー」の言葉通り、「焼肉」「BBQ」に特化したお肉を約150種類揃え、高品質・低価格で、手ぶらでお店に立ち寄るだけで、お肉とカット野菜はもちろん、「紙皿」「割り箸」「コップ」「焼き肉用つけダレ」「ドライアイス・氷」も揃えることができます。
そしてそれだけでなく、「コンロ」や「鉄板」「炭バサミ」などが無料レンタル可能。しかも、必要に応じて「テント」「イス」「クーラーボックス」までもが借りられる、「手ぶらでバーベキュー」という嬉しいサービスを行っています。
これまでのお肉屋さんの概念を拡張させながら、新しいサービスを打ち出す「エンターテインメント・フードカンパニー」をスローガンに邁進する「やまむらや」二代目経営者の山村氏ですが、ここまで道のりは決して平坦なものではありませんでした。在日韓国人として受けてきた「偏見」や、実の父との「確執」という人間関係の苦悩からうつ病になり、もがき苦しみながら乗り越えた経験があるからこそ語れる、挑戦への熱い思いを是非お聞きください。
なぜ、チャレンジするようになったのか?
私は在日韓国人三世として京都に生まれ育ちました。13歳で来日した祖父の影響を受けて育った父は、精肉店としての職に強いコンプレックスを持っており、私に対して「差別を受けない職業に就くこと」を望みました。「俺の言うとおりに生きろ」この言葉が毎日の口癖で、歯向かえば暴力を振う父が大嫌いでした。
語学が得意だったこともあり、「将来は国際社会で活躍できる仕事」を望んでいましたが、それは父の望みと離れており、大反対。結局は「おまえには自由はない。だから家業を継げ!」という言葉をきっかけに家に入りましたが、内情は思っていた以上にひどかったのです。各店舗の売り上げは好調だったにもかかわらず、会社全体が経営不振。それは完全に父をはじめとした経営層の能力不足だとしか当時は思えませんでした。
社員も希望を失っていることは働く目を見れば一目瞭然。お客様の評判が下がっていくのも無理はなく、「何としてでも立て直さなければ」と孤軍奮闘しては、父親との怒鳴り合いの日々。度重なる摩擦に遂には「うつ病」になってしまい、「もう辞めよう」と何度思ったのかわかりません。しかし、子どもの頃から働いている社員たちをどうしても幸せにしたいという思いは捨てきれませんでした。
何度も悩んだ先に、「事業継承をし、会社を立て直すには父との関係を修復すること以外に方法はない」と腹をくくり、父との関係修復に務めはじめました。まずは父を責めるのではなく理解に務めることからはじめたところ、時間はかかりましたが、父も祖父の「事業失敗の穴埋め」や、共に経営をする「兄弟間のトラブル」、「嫁姑の確執」など多くの悩みを抱えていた苦しみを初めて理解することが出来たのです。
それ以降、父とは闘うことをやめました。そして、「父子の関係」はもちろん、周囲との「人間関係の改善」「事業の安定」など、すべてが大きく変わっていったのです。
何のために、チャレンジするのか?
事業継承をする中で、父が本当に大切にしてきたことを深く学びました。私たちのお店は、「おいしいお肉をより安く、一人でもたくさんのお客様にお届けする」ことを使命としています。そして「お客様の立場の経営」「利他の心での経営」を引き継ぎ、地域社会と人々のために貢献していきます。
私たちの仕事は、「お肉を売ること」だけではありません。美味しいお肉を仲間や家族と共に野外バーベキューなどを通して食することで「心を豊かに」「人生を楽しみ」、幸せを感じて頂くことです。
これまでも、より良い人間関係の構築のために、「敬老の日」や「ハロウィン」などの「記念日割」はもちろん、「夫婦チュー割」と題して、レジ前でキスをしてくださったご夫婦に割引き行うなど、「お客さん様の幸せ」に向けたサービスを行い、地域貢献として「震災チャリティー」や「バベ婚」と題した婚活パーティーなどを開催。昨年度、ここで知り合ったカップルが成婚される嬉しい出来事もありました。
幸せこそが、私たちが提供させて頂いているものです。その幸せな関係性の拡張に、会社全体でチャレンジしています。きっと、幸せを感じる人で世の中がいっぱいになれば、「いじめ・差別・虐待」といった、悲しいニュースが流れることはなくなるでしょう。お肉とバーベキューを通じて、皆様の人生にまっすぐに貢献し続けていきます。