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「いちご農家1億円への挑戦」プレゼンター体験談

2018 武下浩紹
楽農ファームたけした

「無理」と思ったときに
「挑戦」が始まる

武下浩紹

「チャレンジJAPANサミット」へのチャレンジ

福岡県大川市でイチゴの産直農家を営む武下浩紹さん。個人部門わずか2名という枠を勝ちとり、第1回サミットへの出場を果たしました。出場の前後でどんな変化があった?そもそも、なぜイチゴ農家がプレゼンテーションを?体験談をお伺いしました。

プロフィール
1973年福岡県生まれ。工業高等専門学校を卒業後、大手企業で火力発電プラントのエンジニア職を経験。26歳のとき実家のトマト農家にて就農。平成14年に苺農家に転換し、JA苺部会にて修行を開始。平成18年に産直苺農家「楽農ファームたけした」を開業。オフシーズンの収入源として開発した「あまおうジェラート」が新幹線の社内販売で大ヒット。チャレンジJAPANサミット2017」の出演動画がきっかけとなり、2018年2月にはオマーンでの講演活動を予定している。

「楽農ファームたけした」https://www.takeshita-farm.com/

感動のピンボケ動画、撮影秘話

─2017年1月7日18時、締切直前のエントリーでした。応募するかしないか、迷っていたということでしょうか?

迷っていたというより、それどころではなかったんです、収穫の繁忙期で。でも、とにかく応募することは前から決めていましたから。
一次審査用の動画は一発撮り。もうすぐ『ゆうパック』の集荷が来るのに、プロジェクターとカメラを設置して、家族やスタッフから「何やってんの?」と言われながらの撮影でした。ピンボケなのはわかっていたけど、撮り直しする時間もなくて、そのままアップロードしたんです。

─そこまでして、なぜご応募を?

農家を始めたばかりの頃は、おいしいイチゴ、すばらしいイチゴを作れば、絶対成功できると思ってました。だからいろんな方法を試して、栽培を含めた品質管理の技術は格段に進歩したんです。
でも、売れませんでした。伝える力がないからです。どんなにすばらしいものを作っても、そのすばらしさを伝える力がなかったら、作ってないのと同じ。残酷だけれども、それが現実ではないでしょうか。
私はイチゴ農家だからこそ、「伝える力」の日本一を目指します。「チャレンジJAPANサミット」への応募も、その一過程という位置づけでした。

1億円に挑戦する理由

1億円に挑戦する理由

─JR九州さんとの取引をはじめとして、武下さんは家族経営の農家としては異例の実績をお持ちです。1億円という目標にはどのような思いが込められていたのですか?

収穫と出荷を繰り返しても手元にほとんどお金が残らない、そういう農家が全国にたくさんいらっしゃいます。そのかたたちに向けて、例えば「年商5,000万円!」と言っても、あまり興味を持ってもらえないんですよ。子どもの学費、親の介護、自分たちの老後……この先どうすればいいのか、まったく見通しが持てない状況ですから。
1億円なら、区切りがいいし、もし私が達成すれば「よし、自分たちも!」と思ってもらえるかもしれない。インパクトを与えることができると思ったんです。

─では、もし「チャレンジJAPANサミット」に応募していなかったら、1億円を目標にすることもなかったのでしょうか。

ないですね!一農家にとっては、それくらい途方もない数字です。だからこそ挑戦するんです。できるとわかっていることを「挑戦」とは呼びません。

壇上で降ってきたメッセージ

─当日会場で感じたこと、考えたことについてお聞かせください。

じつは「チャレンジJAPAN」のことは、両親には一言も伝えていませんでした。収穫の超繁忙期に東京に行くなんて、普通の農家ではありえません。密出国者の心境です。当然練習もあまりできなくて、本番当日は極度の緊張状態でした。
緊張を見事に吹き飛ばしてくれたのが、我武者羅應援團さんのプレゼンテーションです。團長の武藤さんがアメリカ留学から帰ってきたときの話、あれを聞いて、「ああ、一緒だ」と思ったんです。「俺は精一杯やってきたじゃないか!とても無理だと思ったことは今までに何度もあった、いまさら何をびびっているんだ!」と。
そんな風にすっかり勇気づけられて壇上に上がったら、話しているうちに話の内容が用意していた原稿からどんどんずれていきました(笑)。

─そうだったんですか!

1000人のお客さんを前にして感じたのは、「なんで俺はここに立っているんだろう」という不思議な感動です。感動と同時に何かが降ってきたんですよ。
田舎の貧しい農家に生まれたことには、意味があった。自分のようなちっぽけな人間が、不可能といわれる壁を越えることによって、みんなに勇気を与えることができる。そのために自分はここに立っている。……そういう、使命感のようなものです。
かつての私と同じように、「なんで自分は」とか「自分はなんで」と思っている人に伝えたい。あなたが過酷な環境に生まれたことには意味がある。それを今、俺がここで伝えなかったら誰が伝えるんだ!……使命感に駆られて、プレセンテーションをやり遂げた結果、予定より5分もオーバーしてしまいました。

伝達力は未来を切り拓く

伝達力は未来を切り拓く

─出場の前後では、どのような変化がありましたか?

いちばん大きな変化は、両親との関係です。福岡に帰るなり父から一喝されました、「お前は総理大臣にでもなるつもりか!」と(笑)。結局のところ、親と私では理想とする農家像が違う。それはもう仕方ない。以前だったら言い返して、親子喧嘩になっていたはず。でもその時は、「心配かけてすまない。支えてくれてありがとう」という気持ちが自然と湧いてきました。
私がなぜ「チャレンジJAPAN」の舞台に立っていられたか。支えてくれる人がいるからです。両親があれこれ言うのは、それだけ私のことが心配だから。心配するようなことをしてきたのは、私です。それが身に沁みてよくわかりました。だから今は、親に何か言われても、私から言い返すということはありません。

─次の「チャレンジJAPANサミット」へのエントリーを検討している方々へ、メッセージをお願いします。

収穫作業の合間にエントリー動画を撮影したときは、まさか自分が出場することになるとは思ってもみませんでした。その経験から言うと、「自分なんか」とか「無理だ」と思う人こそ、挑戦したほうがいいと思います。
たとえ審査に通らなくても、動画を公開すれば、見てくれる人が必ずどこかにいる。それを前提にしてメッセージを発信するんです。発信することにより、そのメッセージは誰よりも自分自身に響きます。そのくり返しが伝達力を鍛えてくれます。
「チャレンジJAPAN」への応募は伝達力を鍛える一つのきっかけ、いいトレーニングになります。活用しないでどうするんですか。私はもちろん、今年もエントリーしますよ。

─今年はどんなプレゼンテーションをしてくださるのでしょうか?楽しみにしております!

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「武下浩紹ブログ」
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